炭酸ナトリウム(Na2CO3)の塩酸での中和滴定


炭酸ナトリウムの塩酸での中和滴定に関する問題では次のような問題がでてきます。

[問題]
 炭酸ナトリウム水溶液20mlを0.10mol/lの塩酸で中和滴定したところ、右の図のような滴定曲線が得られた。
(1)@,Aでおこる中和反応をそれぞれ化学反応式で示せ。
(2)はじめの炭酸ナトリウム水溶液のモル濃度を求めよ。
(3)第2中和点に達するまでに0.10mol/lの塩酸は何ml必要か。

 炭酸ナトリウムを塩酸で中和滴定すると、2段階に分けて行われるわけですね。ここが、今までやってきた滴定と違う点だったのです。ところが、私は当初、それだけが違いだとばかり思ってきました。だから、私は理解ができなかったのだと今になって思います。
 さて、ここで、実際に化学反応式を見てみましょう。グラフで、@にあたる部分の反応は

Na2CO3 + HCl → NaCl + NaHCO3 ・・・@

となります。これが(1)の@のときの化学反応式です。Na2CO3 + 2HCl → 2NaCl + H2CO3といきたいところなのですが、いきなり、ならずに、一度、NaHCO3になってから、次の反応がおきて、最終的には塩化ナトリウム(NaCl)と炭酸(H2CO3)になるのです。これは決まりごとですから今の段階では覚えておく必要があるかと思います。@の反応が起こると次にAの反応も起こるのですが、(2)をやるために、とりあえずは、ここでAの反応の話はとめておきます。
 これをみてどう思うでしょうか。これは中和滴定なのですから、もちろん中和反応です。Na2CO3は反応式の右辺を見ると、H+を受け取ってますから、塩基です。HClはいうまでもなく酸です。ですから、中和反応なんです。では今まで、やってきた中和反応とみてどうでしょうか。今までやってきた中和反応はたとえば
NaOH + HCl → NaCl + H2O
Ca(OH)2 + H2SO4 → CaSO4 + 2H2O
といったものではなかったでしょうか。このぐらいなら理解ってるよていう方も多いのではないでしょうか。でも@の式はよくわからないなぁといった方も少なからずいるはずです。ではなぜわからないのでしょうか。上の2つの式と@の式の大きな違いは塩基にOH-が含まれていないということなのです。OH-が含まれていれば、化学式見ただけで、価数がわかります。NaOHならOH-が一個なので1価、Ca(OH)2ならOH-が2個なので2価ということになります。じゃぁNa2CO3はいったい何価なのかと、思うはずです。だって、OH-がないから何価かわからないじゃん!でも原点に戻ってください。塩基と酸の定義はどのようなものだったでしょうか。
定義塩基
アレニウス 電離してH+(またはH3O+)を生じる物質 電離してOH-を生じる物質
プレンステッド H+を与える物質 H+を受け取る物質
確かに、アレニウスの定義ではOH-が生じると書いてあります。しかし、それではすべての物質に定義づけができなかった。だから、プレンステッドはH+の授受だけによる定義をし、定義をしなおしたのです。ですから、@の式でNa2CO3ではOH-の動きを見るのではなく、H+の動きを見ればよいわけです。この場合、Na2CO3は、右辺ではH+を1個受け取ったのですから、1価の塩基ということがわかります。
 よって、グラフより、HClが、10mlのとき、中和したということがわかります。ここで、Na2CO3のモル濃度をχmol/lとします。
 Na2CO3HCl
体積20ml10ml
モル濃度(mol/l) χ mol/l0.10 mol/l
酸・塩基の価数1価1価
よって、式は
となります。これを計算して、χ= 0.050となります。したがって、Na2CO3のモル濃度は0.050mol/lとなります。ここでは、問題文に0.10mol/lや、20mlなど、有効数字2桁で書かれていることから、答えも有効数字2桁で表します。
 では(3)の問題にいきましょう。まず、@の部分で起こる反応は、

Na2CO3 + HCl → NaCl + NaHCO3 ・・・@

です。次に、Aで起こる反応は

NaHCO3 + HCl → NaCl + H2CO3・・・A

となります。@で発生したNaHCO3のすべてがAで反応するのです。ですから、Aで反応したNaHCO3のmol数は、@で発生したNaHCO3のmol数と等しいわけです。

ですから、Aのときに使ったHClは、@のときに使ったのと同じ量なんです。グラフより、@の時に使ったHClは10mlです。したがって、Aの時に使ったHClも10mlです。ですから、第2中和点までに使ったHClは10+10=20、つまり、20mlなのです。